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2024/05/12 22:41 |
甘い蜜の香り
例えば、あたしがもっと我慢をすれば、お父さんは怒ったりしないのかな。

例えば、あたしが自分の気持ちをもっと隠せば、お母さんは苦しくなくなるのかな。


恋焦がれて想い描く、「理想の家族像」があまりに幸せすぎて、それからかけ離れている自分の家族が歯がゆかった。

家族間の問題を、小さい頃から、自分だけが順応できなくて、うまく対応できなくて、
心の葛藤をじょうずに整理できなくて、いつも「毒」を飲み込むみたいに、苦しかった。

むせながらも気持ち悪くて吐いてしまっても、黙って「毒」を飲み続けるしかなかった。

飲み続けた結果、あたしが家族の「毒」になった。



人はそれぞれ白と黒の両方の面を持っている。

人との関わりの中で割り切れるところは割り切って、

かわせるところはうまくかわして、自分に無理のない程度にごまかしごまかし、

歩み寄れるところは歩み寄り、まともにガツンとぶつからないようにしながら生きていると思う。

白でもなく、黒でもなく、グレーゾーンで。


それであたしのお父さんも、お母さんも、お兄ちゃんも、妹も、互いに生きていたと思う。

お母さんはお父さんを怒らすのが得意で、お父さんはお母さんを悲しませるのが得意だった。

お兄ちゃんと妹は、そんな2人をそのまま「受け入れる」事で自分を保ってた。

ある意味「あきらめてる」って言ったら、
言葉が、変に自由に飛び回ってあたしの胸に突き刺さるんだけど。

「そのままを受け入れる」ことがあたしには出来なかった。

あたしは、家族の中でひとり、自分だけ「異物」だと感じていた。

奥歯に挟まった得体の知れない変なモノのように。

無理やり付けさせられた重い着け爪のように。


限りなく「異物」だった。


だった。と言うより、今でもきっとそうなんだけど。

お兄ちゃんと妹はだいぶ前に家を出て行った。

あたしはそのままの家族を「受け入れること」も「あきらめる」ことも出来ずに、動けなくなってしまった。


「理想の家族」を求め続けることはもう遅い?


あたしは馬鹿でアホなんだけど、もうこの歳で両手両足をバタバタさせて駄々をこねる訳にもいかず、
それでも無言で、密かに「理想の家族」を求め続けている。

「白」ばっかり求めて求めて静かに泣いて。
気が付けば「黒」ばっかり手のひらに持て余しちゃってて。

正直、苦しい。

どうしてお兄ちゃんや妹みたく、グレーで折り合いつけて、じょうずに生きれないんだろう。

うまくかわして口に含んだ「毒」を、みんなが見ていない所で吐き出せないんだろう。

何でマズイと知りながら、まともに素直に飲み込んでしまうんだろう。



ただ、お父さんが笑ってて、お母さんが笑ってて、
お兄ちゃんも妹も笑ってることだけを願ってただけなのに。

そしたらあたしの口の中の黒い「毒」は、きっと甘くておいしい「蜜」になる。

そうなったらあたしも自然と笑顔になって、自分を、本当に、心の底から愛でることが出来るだろうか。



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2009/06/30 04:39 | Comments(0) | TrackBack() | 白と黒と時々グレー

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