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2024/05/11 04:32 |
卑しく光る涙のしっぽ。
いま、1週間に1回、病院に通っている。

診察のたびに泣いてしまう自分がすごく嫌だ。

もともと、人前で泣くのは嫌いだから。
子供のころ学校で嫌な事があっても、その場は何とか耐えて耐えて。
ひとりで帰る帰り道でだけ、こっそり、ひっそり泣いていた。
学校から家まで歩いて30分弱の夕日色付くその道で。
小さい歩幅でいちにちの哀しみを踏み潰した。
涙は家にも持って帰らなかった。

そんな自分だったのに。
前の主治医の先生のせいか、おかげか。
あたしは「泣くこと」を覚えてしまったみたいだ。

前の主治医の先生は、あたしの涙を許した。
日々、あたしが泣くことを許し、あたしにも許しなさい、と言った。
泣けないでいると、わざとあたしの涙腺を言葉で突付いて、泣かせた。
そして最後に「ごめん、泣かせちゃったね。」と言って、優しくティッシュをくれた。

先生の馬鹿。
どうしてあたしの涙を許したの。
こんなずるい涙を流すこと、なんで許したの。

最近じゃあ、涙が暴れてコントロールが効かなくなってしまったよ?

泣くなんてずるいと思うよあたし。
だって泣くなんて「被害者」っぽいじゃあないの。

「みてみてこの涙 あたしってば こんなにも傷付いてんのよ?」

あたし自分の泣き声大嫌い。
聞いててとっても惨めったらしくて嫌なのよ。

こんなダメなあたしが居て、むしろ泣きたいのは周りの人たちだと思う。

あの日、あたしが「被害」にあったのは確かだと先生は言い切った。
でも崩れたあたしはそれと同時に周りに「被害」を及ぼす存在になった。

先生、ごめん。
あたしを庇ってくれたのに。

先生、ごめん。
あたしを救ってくれたのに。

先生、ごめん。
あたしはあたしを赦せなくって。

先生、ごめん。
あたしはだいぶ前から「加害者」だよ。

同情を誘う、汚い泣き方を覚えた「加害者」だよ。

ごめんなさい、お母さん。
ごめんなさい、お父さん。
ごめんなさい、しぶとく生きてて。

そう唱えながら泣く、「被害者」っぽい「加害者」だよ。


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2010/08/08 02:07 | 白と黒と時々グレー

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