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2024/05/15 03:00 |
五月の病。

「痛い過去を見続けるよりも、
 これからは未来の話をしていこう。」


ねぇ、気付いてるかな?
窓の外にはもう梅雨が来てるのよ。

窓枠型に灰トーン。
梅雨の足音ポタポタと。
雨粒光る蒼い梅雨が死んだなら。

今度もあたりまえな顔で夏が来る。

体突き抜ける程の太陽を味方につけて、
ただでさえ黒いアスファルトをためらいもなく焼き焦がし、
正しい景色さえも、無意識にゆらゆら揺らしてしまう、眩しい夏の足音を。

正しい姿勢で聴く準備、そろそろ始めなきゃな。

たいして変わらない日常の中で、ひとつだけ、人生に関わる、変化、があった。


去っていった人がいる。


無駄に煌めく素敵な色と香り、想い出だけを残して、白い後ろ姿で去っていった人。

芯が強くて、我が強くて、
でも何処かが確かに脆くて、弱くて、そして儚い人だった。

とても大切な人だった。

「だった。」と言い切ると。
それは限り無く過去形になるけども。
でも、今だけは、あえて、「だった。」 を使おう。

優しいあなたが、
何度もあたしにそう願ったからね。

あなたがいなくなった事実。

それはちょっと切ないこと。
それはちょっと淋しいこと。
それはちょっと哀しいこと。

でも同時に、それはちょっと愛しいこと。

で、あるということ。

それらの気持ちは、あなたに対する甘い想いがあるが故に湧き、
ほんのり胸に色を付ける、きっと、今のあたしには必要な感情だから。

少しずつ。
ゆっくり大切大切に。
手のひらに集めた続けた星砂。

ほんの一瞬、目をつむった隙に、指の間からサラサラ流れ、海に溶けてしまったような、
そんな三月が過ぎ、慌てて溶けてしまった星砂を探し、見つけられないままパタパタと、
彼のいない四月が過ぎて逝った。


言いたいことは山ほどあった。
聞きたいことも山ほどあった。
謝りたい、ずるい言い訳も、
心底、解きたい誤解も、
山ほどあった。


そして束の間の雨上がり。


ダイヤモンド色した滴を飾り、きれいな新緑色した五月の足音が聴こえる今。
あたしが見つけた四つ葉のクローバーが、もうすぐあなたに届くだろうね。


ああ、そうか。


あたしは正しい姿勢で、あなたが生きている世界を愛し、
優しいあなたの望み通り、何よりあたしはあたしを愛すのみ。

あなたは、あなたの行くべき場所へ行っただけ。
あたしは、あたしの行くべき場所へ行っただけ。

たとえあなたが忘れてしまっても、
あたしが覚えていれば、きっと、凛と繋がるね。

あたしが想ったその瞬間、
無くした星砂は手のひらに甦り、
キラリと生きる魅力色を放つということ。

それに気付いたから。

ありがとう。
あたしの味方になってくれて。

覚えていて。
あたしもずっとあなたの味方だよ。


「また会える、かもよ?」


遠い日を淡く夢見て。

今日も昼が眠り、空に瞬く星を合図に、夜が目を醒ます。
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2010/05/17 07:07 | 夢見る夢子

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