「痛い過去を見続けるよりも、
これからは未来の話をしていこう。」
ねぇ、気付いてるかな?
窓の外にはもう梅雨が来てるのよ。
窓枠型に灰トーン。
梅雨の足音ポタポタと。
雨粒光る蒼い梅雨が死んだなら。
今度もあたりまえな顔で夏が来る。
体突き抜ける程の太陽を味方につけて、
ただでさえ黒いアスファルトをためらいもなく焼き焦がし、
正しい景色さえも、無意識にゆらゆら揺らしてしまう、眩しい夏の足音を。
正しい姿勢で聴く準備、そろそろ始めなきゃな。
たいして変わらない日常の中で、ひとつだけ、人生に関わる、変化、があった。
去っていった人がいる。
無駄に煌めく素敵な色と香り、想い出だけを残して、白い後ろ姿で去っていった人。
芯が強くて、我が強くて、
でも何処かが確かに脆くて、弱くて、そして儚い人だった。
とても大切な人だった。
「だった。」と言い切ると。
それは限り無く過去形になるけども。
でも、今だけは、あえて、「だった。」 を使おう。
優しいあなたが、
何度もあたしにそう願ったからね。
あなたがいなくなった事実。
それはちょっと切ないこと。
それはちょっと淋しいこと。
それはちょっと哀しいこと。
でも同時に、それはちょっと愛しいこと。
で、あるということ。
それらの気持ちは、あなたに対する甘い想いがあるが故に湧き、
ほんのり胸に色を付ける、きっと、今のあたしには必要な感情だから。
少しずつ。
ゆっくり大切大切に。
手のひらに集めた続けた星砂。
ほんの一瞬、目をつむった隙に、指の間からサラサラ流れ、海に溶けてしまったような、
そんな三月が過ぎ、慌てて溶けてしまった星砂を探し、見つけられないままパタパタと、
彼のいない四月が過ぎて逝った。
言いたいことは山ほどあった。
聞きたいことも山ほどあった。
謝りたい、ずるい言い訳も、
心底、解きたい誤解も、
山ほどあった。
そして束の間の雨上がり。
ダイヤモンド色した滴を飾り、きれいな新緑色した五月の足音が聴こえる今。
あたしが見つけた四つ葉のクローバーが、もうすぐあなたに届くだろうね。
ああ、そうか。
あたしは正しい姿勢で、あなたが生きている世界を愛し、
優しいあなたの望み通り、何よりあたしはあたしを愛すのみ。
あなたは、あなたの行くべき場所へ行っただけ。
あたしは、あたしの行くべき場所へ行っただけ。
たとえあなたが忘れてしまっても、
あたしが覚えていれば、きっと、凛と繋がるね。
あたしが想ったその瞬間、
無くした星砂は手のひらに甦り、
キラリと生きる魅力色を放つということ。
それに気付いたから。
ありがとう。
あたしの味方になってくれて。
覚えていて。
あたしもずっとあなたの味方だよ。
「また会える、かもよ?」
遠い日を淡く夢見て。
今日も昼が眠り、空に瞬く星を合図に、夜が目を醒ます。
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