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2024/05/10 11:26 |
真夜中の魔法

夜中からケーキがムショーに食べたくて。

たぶん世界中で、今、いちばんケーキを食べたいのはあたしじゃねぇの?ってぐらい。

甘いケーキだけが食べたくて。

近くのスーパーまで歩いて買いに行った。

15分後、無事、任務を果たしたあたしは「甘い宝物」をもって帰り道を急ぐ。

あたしは小走り。

なぜか焦ってた。

このケーキはあたしのなのに。

誰もあたしからケーキを取り上げたりなんかしないのに。

気持ちばかり焦っても体は思ったように動いてくれない。

足がもつれる。

でも気持ちはさらに焦る。

体が、暴走する心を繋ぎとめられない。

バラバラに離れる。散り散りに。

途中、夜の闇に何度も飲み込まれそうになった。



「闇に飲まれて堕ちていくのは怖いなぁ。」

と思う自分と、

「いっそこの身体、飲まれてって堕ちるトコまで堕ちちゃえ。」

って思う無責任な自分が居て、その狭間でゆらゆら揺れてた。



真夜中の闇が紡ぎ出す空気はとても怖く、時に魅力的。



どうしてだろう。

あんなに欲しかった甘いケーキが、

あたしの手の中でどんどん色あせていった。

いらなくなった「甘いお荷物」は蟻にあげた。

さよならケーキ。







そしてあたしは夜の闇を蹴って宙にふわりと飛んだ。

左側に白い流れ星がキラキラ流れていった。

焦ってた心が静かに落ち着いた。

慎重に夜空を踏みしめて歩いた。

足は、もう、もつれたりしない。

そのうち夜風を愛でて走った。

近くで木が大きく揺れた。

草が静かに歌った。

幸せな夢だった。








「夢」のはずだった。

あたしは夜の闇の中、知らない場所にポツンとひとり立っていた。

時計を見たらケーキを買いに出てから3時間が経っていた。

お気に入りのピンクのサンダルは履いてなかった。

いつ脱いだんだろう。足の裏は真っ黒だった。

両手の甲が傷だらけで血が滲んでいた。

体も心もぜんぶが痛かった。



夜空を蹴っていたはずの足は黒い地面を蹴っていて、白く流れた星は車のライトだった。



魔法がとけた後のシンデレラってきっとこんな気持ち。

哀しかった。でも不思議と涙は出なかった。



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2009/05/15 12:49 | Comments(0) | TrackBack() | 未選択

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